5泊6日の旅程だった北海道旅行も終盤となるわけだが、1日1日が忙しすぎて、そんな感慨に浸る暇もなかった。
前日で引っ張ったように、今回は前日の夜から話を始めることにする。
なぜかというと、網走をうっかり旅程に組み込んでしまったからだ。
順を追って説明したい。
そもそも、インターネットでエアドゥのチケットを取る際、私は少しばかり考え込んでいた。
今回は、慰安を兼ねた面白おかしい聖地巡礼、という位置付けで行こう。
割と真剣にそう考えていた。前回(2年ほど前に、なんのイベントもない中、7日ほどをかけて北海道を斜めに横断した)のような無茶はすまい、一つ一つの場所をじっくり味わって行こう、と。
もっとも前回より多少なりともこちらも賢くなっている。北海道はまず持って「街をぶらぶら」であまり得るものはない。あるとすれば小樽や札幌のような大都市だけで、旭川でさえ、街をぶらぶらしたところで寂しくなるだけだ、ということはわかっている。ピンポイントで博物館や景色を狙っていかねば、あまり楽しめない。
二度三度通った土地ならば、さらにディープな場所を探してうろつくのもあるいは楽しいかもしれないが、まだ一人旅2回目なのだから、ここは大人しく有名どころの観光地を巡った方が賢い。
その上、前回と違うのは、今回は推しのARが手に入るスタンプラリーを実施中なのだ。来年三月まで。周り切っておくに越したことはない。少なくとも、まあ最推しぐらいは、集めておくべきだ。
箱推し、と言っても差し支えないぐらい好きな作品だが、まあ多少は好みがある。牛山さんとキロランケは死守したい。あとやっぱり、杉元とアシリパさんは外せない。
今の所、釧路エリアは諦めたものの、順当に回っている。もう1日ほど札幌泊を伸ばせば、夕張や月形にも行けたかもしれないが、長距離移動は二風谷で十分堪能した。ありがとう。広いね、北海道。
というわけで、深夜バスである。
まだ釈明が足りない。
何か忘れていないか。
ああそうだよ、白石由竹ARスタンプを手に入れるために、網走に行きたかったんだよ私は。
北海道は深夜バス網が発達している。札幌からなら、主だった地方には大体バスでいける。ただし八時間とかかかるけど。
前回の旅でもバスを使って、旭川から北見までを移動した。あれは確か、18時ごろ出発便で、23時ぐらいにつくような感じであった。普通の長距離バスである。北見になんの用があったのか、といえば、北の大地の水族館に行きたかったんだけど、北見駅よりも留辺蘂の方が近い、ということは後から知った。ちゃんと調べてから動いて、ねえ。
そういう迂闊者であるから、大体「なんとかなるっしょ」で動いてしまいがちだが、幸いに今の所「なんとかならなかった」ことはない。タクシーに万券を消費したこともまあない。そこそこ乗り切っている。
自らトラブルを呼び込むのは感心しないが、こういうスタンスで旅をするといいこともある。きちきちに予定を組んで、まず万事間違いなし、とやると、それが万一何かで狂ったときに、腹立たしくなるじゃん。自分が粗忽者だと、まあ大概は自分のせいなので、何か不測の事態が起こっても笑って許せる。
まあ、「なんとかならなかった」というまでの不測の事態は、大概準備不足から起こるわけだが。
今回も様々な準備不足であれこれと浪費をしたわけだが、今回の粗忽は「バス待ち時間、何しよう」を全く考えていなかったことだった。
深夜バスの出発時間は、23時40分。開拓の村は閉村ギリギリまでいても16時半までである。7時間もあるのだ。
仕事できちゃう。
流石にこんな旅程は一人旅ならではだが、一人旅故に時間の潰し方がよくわからない。深夜バスの発着場だけは不安なので早めに確かめておこう、と発着場付近に向かう。
バスは中央バス・札幌ターミナルから出る。利用者は結構いるだろうと踏んでいたが、それほどいなかった。まあ平日だしな…ターミナルの待合室は地下にあり、深夜にあまり長居したい雰囲気ではない。
ターミナルからすぐ行けるところに食堂があった。飲みながら待っていれば時間も七時間ぐらい潰れるだろう、と思って行ってみると、どうも出立前にそそくさと軽食をかっこむという雰囲気だった。
チェーン居酒屋とかが入っている雰囲気ではない。実際、東京で見かける店をあまり見なかった印象はある。地場レストランが美味しいのに、わざわざ全国展開している安居酒屋に行くこともないだろうということなのか。
この辺りじゃせいぜい潰れる時間は30分である。土地勘のない場所をウロウロもしたくない。中央公園あたりまで戻っても良さそうだが、深夜ふけてからの移動もいやだ。札幌って言ったって熊が出るかもしれないのが、北海道である。上の写真の撮影時間を調べてみたら、19時半になっていた。外はもちろん真っ暗だし、人気がびっくりするほどない。何より寒いし。
少し外を歩き出してみると、割と新しめの大きなビルがどんと立っているのを見つけた。あとで調べたところによると、さっぽろ創生スクエアというところらしい。図書館やホールなんかが入っている箱である。最上階にはどうもHTBが今は入居しているらしい。
http://www.sapporo-sosei-square.jp/guide.html
いわゆる箱物の匂いがぷんぷんするが、入ってみるとまだ中ではテスト勉強に勤しんでいる学生などもいた。無料で座れるボックス席みたいなのがあって、スタバらしき飲み物を持ち込み、お友達グループでダラダラだべっている。
私は一人だしぼんやり座っていても不審なだけである。夕食が食べられる場所ぐらいあるでしょ、と散策してみると、レストランがあってほっとした。
「DAFNE」という洒落たレストランである。ともかくも居場所を得てほっとしたのも束の間、閉店が22時のようなので、それまで粘った。
こんな雰囲気。
少なくとも2時間は粘るつもりだったので、アラカルトで何かいろいろ頼んだ。
ピクルスだったっけ。ビーツなどの食材が使われている。お値段は東京並みだったが、盛りが良い。いつも思うんだけど。
上に乗っているのはカブだと思うんだけど、肉料理だった気がする。
ワインなどを飲んでいれば結構愉快に過ごせるわけで、酒飲みはこういう時に時間を浪費することが得意だ。
閉店とともに店を出て、バスターミナルに戻ったが、まあまだ一時間以上ある。仕方がないのでベンチに座って、バスを待つことにした。この待ち時間の間に、「ゴールデンカムイ」が大英博物館の漫画展に作品を出すことが決まった旨のニュースを見たらしい。「らしい」というのは当時のTwitterで確認したからである。
あとはバスの中で本誌を読んだりした。
明けて12月6日、深夜バスの宿命としてどんなに長距離移動でも大概早朝に放り出される。到着場所は網走バスターミナル。とりあえずもホテルに荷物を置きに行きたい一心で、ホテルの近くまで行ってくれるバスを調べた。幸いバスは通っているが、ここでも再び待たされる。7時半ごろのほぼ始発のバスに、一人で乗っていると、運転手さんは停留所など無視してどんどん行ってしまう感じだ。慌てて観光ホテル前で止めてもらう。
この時にあまりに急いで降りたので持って行ったゴールデンカムイコラボイベントで購入した膝掛けをバスの中に忘れてしまったことに宿で気がつき、急いで網走バスに電話しておいた。忘れ物があったら届けて欲しい、と伝言だけ残したら少々心細かったがとりあえず膝掛けのことは忘れることにする。
とにかく寒いのでマフラーだけじゃ心許ないので、膝掛けも引っ張り出して首に巻いていた。普段しないことをすると何か起こるもんである。
冬のことで日の出も遅いが、それにしたって早朝感がたまらない。
チェックインの前なので部屋には入れないが、荷物は預かってもらえた。本当ならお風呂の一つも浴びたいところだが、博物館網走監獄前まで行ってくれるバスが来るまで、ロビーで待つことにした。このホテルのロビーはコーヒーが無料で飲めるし、漫画がいっぱい置いてある。おまけにパソコンが使えるので、網走バスの時刻表(死活問題)をプリントアウトしておいた。割と紙に頼る。なぜならスマホはいざというときに電池不足になったら詰むからである。
司馬遼太郎も利用した宿である由。宿泊料は安いのに、作りは大変立派で、往時網走が観光で栄えたことを忍ばせる。
バス待ちまで時間があったので網走湖まで歩いて行ってみた。ここのしじみは大きくて美味しい。
JR釧網線の踏切。滅多に電車はこないので基本開きっぱなし。
バス時刻の関係で直行便に乗らずに「開館一番乗り」を目指すことにした。確か、「天都山入口」から歩くんだったか。
歩いてだいたい10分ぐらいだが、人通りも車通りもまれで、心細い山道である。本州ならそんなにピリピリしないがここは北海道だからな…
車で来ることがほぼ前提な門構えだが、徒歩できたからこそこの写真があるとも言える。いつもは直行バスで素通りするから…
忘れずにこれを押さえておく。
この日はもう網走監獄だけ見ておくつもりだったので、「17時6分」で十分だが、冬季の開館時間は16時30分。バス停で30分虚しく待つことを考えると侘しくなるので15:36を目指すことにする。最終はとっておけ。北海道の(特に冬季の)おきてだ。
とはいえこの日はまだ晴れていたので、冬季とはいえ移動は比較的楽にできている。晴れていたからこそ、天都山入り口から歩いてやろうぐらいの心の余裕があった。
早速、我らが白石由竹ゲットだぜ!!!
やっぱり、QRコードは監獄のチケット売り場の外にあった。背景のおしゃれな建物は監獄食堂で、「監獄食」が食べられるが、この日はなんと、リニューアル期間中ということで閉まっていた。完全にお昼を当てにしていたのでピンチ。
気を取り直すのは早い。お気づきの方もあろうかと思うが、「五寸釘の寅吉」がいなくなっている。更生が認められたか、刑期を全うしたのか。
とらちゃんがいないなら、俺が。
白石の写真は並行が取れてないがキロちゃんは気合を入れて撮った。どっちも推しだがキロちゃんの扱いは丁重である。なんなら身長もこれくらいかな…とか思いながら撮っている。本気だ。
白石の足のポーズが並行取りにくいんだよ…
人生三度目ぐらいなので、もう見るべきところは見ているが、そういうものではない。何度言っても面白いのである。
サイン色紙スペースは開拓の村と同様、さらに豪華になっていた。
げに偉大なのは「アニメ化」の呪文である。
杉元とアシリパさんもきてくれている。
可愛いねえ… ブリブリの白石を描いてくださった神に一頻り感謝。白石推しにとってはここがまさに聖地の中心である。こんな可愛い顔、本編でみたことないよ。
作中で白石たちが広げていた網走監獄の見取り図だって、ここに行けばみることができる。
白石たちが見ていた地図とほぼ同じであることがわかると思う。気になる人は「ゴールデンカムイ」第126話「門倉看守部長」を見て欲しい。ハスに切ってある壁といい、この図面で間違いない。
なお、実はこの放射状舎房になったのは大正時代かららしい。昔の明治時代の旧網走監獄の獄舎は、横並びのなんの変哲もない、学校みたいな形で建てられていたらしい。作中でも鍵となる火事が、旧獄舎を焼き、現存する五翼放射状舎房が建てられたそうだ。
この下りは前半の白石の大きな見せ場でもある。この時の白石は本当にかっこいいから見て。
しかしやはり、白石といえば教誨堂のあのエピソードが欠かせない。絵姿に恋をして本物を追い求めると言うなんともロマンチックな白石の甘酸っぱい青春物語の舞台である。
このエピソードからすると、白石には結構思い込みが激しいところがあるんじゃないだろうか、軽薄なようでいて、一度信じるとてこでも動かない、と言う性質かもしれない。
「あなたさまは、宮沢教誨師ではございませんかっ!?」ごっこもできる。白石の立ち位置と、
シスター側の目線はもう少し斜めのはずだが、まあ合格ってことにしておこう。教会(じゃないけど)の扉バーン! は作者の野田先生もやりたかったシチュエーションなんじゃないかなとか思う。なんですっけ、名画の。「卒業」ですっけ。
見取り図で言うとちょうど白石たちが穴を掘っていた壁の近くに非常門が一つ、またその先にもう一つ裏門がある。作品の中では描かれることはなかったが、ここから農場などへの労役に出たりする門なので「白石も通った(に違いない)門」として写真に残す。
キロちゃんにもお付き合いいただこう。
立て看板にはこの裏門についての説明があり、そこにも「大正8年着工」とある。そもそも赤煉瓦門が「そう」なのだが、ゴールデンカムイの柔らかいところはそれを明治の物語に使っちゃうところだと思っている。考証は相当きっちりしているのだが、所々に歪みがある。現代人が「こうであって欲しい」と思うところに。
平成5年まで、受刑者が外の作業場(農場や養豚場など)に向かう際に使われた由。
超有名な舎房。長屋のような舎房が五つ、放射状についている、監視に特化した建築方法。中央に見張り用の部屋があり、5つともの廊下を一揖できるようになっている。
消火栓が気になるけども、ほぼ使用当時の光景が広がっている。平成9年まであったのだから、その頃ならばあの位置に消火栓あったろうな。
せっかくゲットしたからには遊び倒す。どのシーンで使っても「アイヌの色男とデートに使っていいよ」と言う写真になってくれる有能なキロちゃん。
こちらは「あの人」とともに。夢のツーショットやん! 「あの人」とはこの白石由竹のモデルともなった、白鳥由栄、昭和の脱獄王である。網走監獄の見所の一つで、だいたいどんなガイドブックにもこの褌姿は紹介されている。
「白鳥由栄、いかにして監獄を破りしか」と言う絵なのだが、どう見ても珍百景になってしまう。まあそれほどの前代未聞のアクロバットだった、と言うことにしておく。
実際の白鳥由栄の容貌や声については、この博物館の中にもいくつか展示がある。頑固そうな四角い顔と、晩年の好好爺めいたインタビューの音声とが、かえってミスマッチで凄みを感じる。
六角形の見張り室。消火栓がドーンと目立つアングルになってしまった。ここからならどの廊下も見渡せるが、面白いのはそれでは舎房の方からはここが見えるかと言うと、見えない。監視してるぞと言う威圧はそれほど目的ではないのかもしれない。逆に、舎房の格子窓からは周囲にポツリポツリと立っている見張り小屋が見えたり見えなかったりしたのだろうか。
いわゆる「雑居房」「独居房」は日常用であるから、最低とはいえ中で生活ができるように考えられている。冬場は長いストーブの煙突が廊下の真ん中に鎮座していたそうである。さすがに網走のマイナス30度の冬をまともに過ごせるとは思えないので温情というよりもさすがに必要最低限、という感じではあるが、ほっといたら最悪死んでしまうしいくら当時の人権意識とはいえ死んでしまえば困るわけだろう。平成9年なら尚更である。いつ頃からストーブが設置されたのかはちょっと気になるところ。
懲罰のために使われた個室の「懲罰房」明かりとりの窓もないから閉じ込められれば真っ暗だろうと思われる。京都の六波羅蜜寺などで胎内巡りをしたことがある人ならあの「鼻をつままれてもわからなそうな真っ暗闇」をご存知かもしれない。あれに数日耐えるわけだ。
当然耐えられない人もいただろう。明治の脱獄王・五寸釘の寅吉は、この懲罰房からも脱走を試みている。しかも、確か展示によれば天井を破って上から出たそうである。豪快。
しつこく。最推しであるからたくさん使っていくのである。それにしたってその辛い辛い懲罰房をものともしない態度。作中で破っていた懲罰坊は、なんというかもう少し可愛げがあった気がする。確か石のおうちじゃなくて、木のお家だった。
懲罰房の構造は二重扉で描かれていたので、あの方法はもしかして無理なんじゃないか、と思わなくもない。(詳細はゴールデンカムイ9巻を参照のこと。見てなかったらスルーして欲しい)
がまあそこはロマンですよロマン。白石は天井ブチ破りよりクレバーな方法で抜け出して欲しいっていうね。
昼食を無視してとにかく廻りまくっていたら、2時ごろに流石にお腹が減ってきた。監獄食堂はしまっているので、ご飯らしいご飯は食べられないが、ミュージアムショップも兼ねた売店に軽食が売っていることはリサーチ済みである。
こんなに可愛らしいパンケーキ! と白石アクスタ。セリフ付きなので一番くじのやつだな。お腹がペコペコだった撮影者の気持ちを代弁している。
種類違いのベリーが乗っていて女子受けする感じなのである。可愛らしいのだ。
脱獄王豆煎餅。五寸釘の寅吉バージョンも続けて売っているので、寅吉ファンにも安心。中身はおんなじだが、美味しいので二つ買っても良い。
パッケージまで特別パッケージで、白石由竹になっている。捨てれないじゃん、ヤダァ…
何度か網走監獄博物館は訪れたことがあったはずだが、今回の訪問で初めてエゾリスに出会えた。写真じゃわかりにくいが中央付近にリスが写っているの、おわかりいただけるだろうか…。
無茶苦茶すばしこくて、望遠レンズで挑戦してもなかなか捉えられない。
夕方の光線を名残惜しんだりした。
帰りがけの網走湖。めちゃくちゃでかいしじみがたくさん取れる。お土産屋さんにも真空パックのやつとか、お味噌汁とセットになったやつとか売っているので、網走観光の折にはお勧めのお土産である。
日の傾き具合と、水鳥の群れ。郷愁をそそられる風景。
ホテルに戻ったらすぐにご飯。かに食べ放題御前だぜ! 網走は漁港もあり、海産物も豊富である。
アクスタ遊びは欠かせないですね……!
この麺が、ホテルの推し鍋だったはず。記憶がおぼろ。
アルコール類は瓶がドカドカ置いてあるコーナーから自由に注ぐことができる。天国か…
この方式、網走では割とスタンダードらしくって、他のホテルに宿泊したという友人にも同様の話を聞いてびっくりした。
もう一度いう。天国かな…?
この日のラインナップ。焼酎が多いので「まあそんなに飲み干す奴はおるまい」という地元の人の気持ちもあるかもしれない。じゃがいも焼酎という「あばしり」を試してみた。
割り物にぴったりそうな、クセのないすっきりとした味わい。度数も高いから割った方が良いよ…(飲みすぎた)
しっかり締めにしじみご飯まで食べる。
お腹がはちきれそうだ…
反省がない。