日月星辰ブログ

Vive hodie.

山の日に山映画

去る11日のこと。

 

「神々の山巓」見ました。

longride.jp

7月初旬には公開していて、めちゃくちゃ楽しみに待ってたんですけど、夏コミにサークル参加(オリジナルBLサークル)していたために新刊修羅場で見逃し続けて一ヶ月。

もう東京では新宿ピカデリーと有楽町ヒューマントラストシネマでしかやってなかった。

しかも一日一回。

 

 アニメ映画の良いところって、役者に危険を承知でこういう演技をさせなくていいところだと思うんですけど(今はCGとかあるからもっと楽に撮れるのかもしれない)、私は「は? なぜ壁を登ろうとするのか? ばかなの?」ってぐらい登山には興味もなければロマンもないので… それでも、山登りの楽しさや面白さ、それに命をかける気持ちはちゃんと受け取った。

 ちなみに原作は漫画・小説共に未読の状態で行きました。原作も多分そうなんでしょうけど、「マロリーのカメラの謎」についてはなるほどそういう落とし所か… と思った。軽々に答えを見せない書き方は文芸作品らしい終わり方で私はすきです。

 山にゆく準備をテンポ良く音楽に乗せて見せてくれたり、深町も羽生もちゃんとトレーニングしてるところがうつったり、あとベランダに洗濯物干してたり、「生活」が丁寧に描かれているのよかった…けど、やっぱりフランス人には日本のちまちまっとした縮尺感はわかんないんだろうな ってぐらい、ベランダと部屋が広かった。深町の部屋とかめちゃ広い。

 谷口ジローの丁寧な絵がお手本にあるのでそういうところが間違えてくることはないだろうな、と思ったところにちょいちょい変なところがあるのもちょっと面白かったですね。アニメーションなんて作る過程で何度もチェック入るのに。日本語の棒引きは縦書きの時は横倒しにはしないです…

 原作の時間軸であるところの1990年台後半の日本の描写と、それより15年から20年ほど遡る羽生の青春時代のお話が描かれる中で、微妙な風景の違いなどは丹念に書き込まれているなあと思いました。羽生の消息を知るキーパンソンの女性・岸涼子の顔がなー… あんなヨーロッパ人が絵に描いたようなジャパニーズフェイスにしなくてもいいのに。フランス人め。もしかしたらあれが美しいと思ってるのかもしれないけど、さすがにこれはいただけない。谷口ジローのお手本はちゃんと見たのでしょうか。原作はどうだったのかなーと思って検索したら普通にヒロインフェイスだった。なんだよ。

 

映画『神々の山嶺』パトリック・インバート監督インタビュー - TOKION

 

 岸涼子と羽生の間のラブストーリー要素をカットする判断は映画製作者としては正しいと思うし、アニメ特有の高山病の描写や、滑落への恐怖、ビバーク中の心身の弱り方、名声を得た人間と、実力がありながら不遇をかこつ人間の対比とか、そういうところはすごく胸に迫った。悪戯に盛り上げる演出もなく、前編丁寧かつ淡々としていたのも、好みではあります。なにより超大作目白押しの昨今の映画シーンで、90分っていう尺はありがたい。気軽に見に行ける。

 総じて山を登らない人間が山の日に山を思うのにこれ以上ない作品鑑賞体験となりました。パンフレット買った。