日月星辰ブログ

Vive hodie.

ゴールデンカムイ #284 感想

この時代であればまあそういう方向はあるな。

以下当然ながらネタバレばりばり。 

  世界史を受験勉強で選択すると、今では考えられない当時の常識が今ひとつ理解できないまま、鵜呑みに覚え込む事象がいくつかある。ロシアからアメリカがアラスカを買う話とか、国が国を買う? はあん!? とまあ、高校当時は思っていたわけである。が、そういう時代は確かにあった。

 今もそういうの、有効なのだろうか。国が国の借金を解消するために土地を売るとか。SNSで散々に叩かれそう。香港は借地権が切れて中国に戻ったが、やっぱり叩かれた。住んでいる人間からすると勝手に政府が政府都合で変わるのだから、どっちに転ぼうがなんとなく嫌に決まっている。よく考えてみれば戦争でぶんどるのだって似たようなものだし、どっちかというとお金で買う方が人道的な気もするが、そこに住んでいる人のことをまったく考えてない。いずれにせよ悲劇が生まれるに決まっている。しかし、三国志とか、信長の野望とか、ああいうのは「まあ昔はあったんだろうな」と思えるのに、お金で買うのはピンとこないというのも不思議な感じだ。頭では分かっていても、感情としておっつかない感じ。

 先住民族問題の多くは、国際政治的なそういうパワーゲームで勝手にどこかの国の土地となってしまったところに、元々住んでいた先住民族が翻弄され、迷惑を被るという構図がたくさんある。アイヌ問題の一部も例外に漏れない。

 「そんな大金、どこにやった」という問いの回答として、今回の落とし所は、そう言った意味では非常にクレバーな落とし所だ。ありうる。

 しかし土方歳三の資料の読み方がずるいぞ。すっからかんに全部使っちゃった、ってみんなそりゃ、思うわよ。

 当時戦争貧乏だったロシア帝国アメリカが支払ったアラスカ州の値段が720万ドル。1,518,807平方キロメートルもの広さがあるアラスカ州がそのお値段、北方の大きな島としての北海道83,450平方キロメートルのお値段として、金約40トンはない値段ではない。むしろくそたかい。

crd.ndl.go.jp

 このページによれば、1874年、一ドルは約1円。(わかりやすい!)明治四年の新貨条例で金1.5g=1円だったそうなので、約40トンは約2700万円。ずいぶんぼったくられてるけど、そこもまあ、パワーバランス… なのかな。(計算がめんどくさいので数字をまるめまくっています)

 いろいろ物悲しい気持ちになる。私も涙で前が見えない。

 最初、ガルトネル事件の話してるの白石かと思ったけどさすがにそれは買い被りすぎている。永倉だった。

 アシリパさんが父の遺志を受け継いで先人の選択に全力で「いいね」を押す中で、みんながずっこけているのがシュールである(土方さんたちもずっこけているのかなと思って探したけど、流石に加わっていなかった。夏太郎や白石たちの若者や、都丹庵士、牛山さんがずっこけているのは理解できるが、ソフィアはうーん、こけるかなあ。ロシアがアラスカ売ったことぐらい知ってると思うけどね、この人は。「たっけえよ」っていうコケなのかもしれない。こういう息の抜き方が野田先生のほっとするところ。本当にどんなにシビアな展開やシリアスな展開になっても、そこはゆずらないんだなあ…。

 この漫画のおかげでピンとくるようになったものはいくつがあるが、今回新たに「領土売買」が加わった。先住民族が利権をたもつには、金という「力」がやっぱり必要なのか… しんどい…