日月星辰ブログ

Vive hodie.

あすけん日記下書き放出

あすけんの日記の字数制限は500字である。

そうするとディテールが削げてしまうので救済。

 

泉屋のクッキーの話。

 

二日連続お菓子の話。

泉屋のクッキーにも魔が潜む。午後4時ごろ、社長室からクッキーのお裾分けが回ってきた。お中元の季節にはままあることで、これの誘惑に抗えた試しがない。

送られてくるものは社長宛に趣向を凝らしたグルメばかり。昨今はそれでも世の不景気を反映してか、かつてほどべらぼうなものは来なくなった。べらぼうなものなど社長が召し上がればいいのであって、お裾分けを得るにも恐縮してしまうようなものだと困る。

今回は泉屋のクッキー。おばあちゃんちなんかには空き缶があって、こま物入れなどに供されがちなものであるが、アレがご年配のご家庭にあるにはそれなりの理由があるのだとわかる。ああ言ったものをお土産やお中元でもらうご家庭というのは概ね偉い人のご家庭であり、年功序列が染み付いていた昭和の中流階級であれば、50歳も越せばああ言ったものを送ってくる顧客なり、後輩なり、教え子なりがいるということだ。ちなみに私の祖父は高校教諭であった。泉屋のクッキー缶は教え子からのものであったろう。おそらく。

その、泉屋。偉い人に送ってもまず間違いない、焼き洋菓子の老舗である。昭和2年の創業、もともとは貿易商であった泉伊助園子夫妻が、アメリカ人宣教師ロイド夫人の指導をもとに作り上げたクッキーを発祥とする。どこのデパ地下にも売り場を見かける名店である。まあココノオクットケバマチガイナイワヨ、と多くの日本人が思うアレである。

「好きなだけおとりなさい」とお菓子を配ってくれた社長秘書どのは言った。えーいいんですかー、と欲張った結果が5つである。200キロカロリー越えの重みだが、伝統の重みを感じさせないカジュアルな、その実良質で慎み深い美味しさと言ったらなかったので気にしないことにした。同じ熱量のものを食べるにしても精神的滋養というものがある方が良い。