日月星辰ブログ

Vive hodie.

新宿山ノ手七福神

木・金、と久しぶりすぎる有給を取ったので、どこかに旅にでようと思うのだけれども、資金もなければ計画もないのでやめて、ひとつ東京に観光に来た旅人になりきって、ぶらぶらすることにしました。

私の職場は東京都新宿区の、わりかし閑静な場所にあります。新宿に近づくに連れカオスぶりを発揮する新宿区ですが、周辺はそんなに大したことない。駅周辺のあのいかがわしさ、雑駁さも嫌いではないですが、そこから少し離れたところにはなんだかいろいろあるようです。

今回は表題どおり、「新宿山ノ手七福神」をめぐりました。神楽坂の毘沙門天善国寺をスタートに、ゴールは新宿1丁目の閻魔様と布袋和尚を詣でる、という計画。初春らしく肌寒く、天候は今ひとつ、黄色い薄衣に覆われたような空から、ぼんやり霞んだ陽光が降り注ぐという体でしたが、ちょっと前の凍てつく寒さは多少和らいでいる。それでも歩いていると、抜弁天に至る頃には身体も随分温まっていました。

せっかくの有給を、いわば職場の周りをぐるりと廻るようなコースで散歩したのは、そのほうがいっそう、休暇の優越感を味わえるんじゃないか、という目論見によるもので、これは案外とあたっていました。普段はせかせか、訪問先を目指して横目にしている町並みが、新鮮に見える。電車に乗っているお客さんは大半が専業主婦か取引先へ急ぐ営業マン、学生といった風体で、普段の通勤電車ともなにやら違うようである。金曜日ならまだこれに、多少は休みらしい人も混じりだすかもわかりませんが、木曜休みというのは、ほんとにもう、いい。

行く途中の列車に乗りながら、どちらから攻めるべきか、新宿側からか神楽坂側からか、を予め用意しておいたPDFを照会しながら考えている。居住区からアプローチするなら、神楽坂がわのほうが近いし、あっちのほうが土地勘もあるので、ということでそうしましたが、これはちょっと、後で少し後悔する。なぜなら散歩の最後、お茶を飲んで帰る、というのであれば断然神楽坂のほうが雰囲気はいいわけでして、もし東京観光のついでに回るよ、というような方がいらっしゃるのでしたら新宿側からのコースをたどるのをおすすめします。

そんなわけで出発点はJR飯田橋駅、ここの駅は坂のせいか少し傾いでいて、停車する電車の下り口がものすごく段差があるので、降りるときは気を付けねばなりません。西口前には「働いている人が偉いって、働くのなんて当たり前じゃんね。むしろいかに働かずに生きるか、働かずに生きられたら勝ちだと思う」とか知ったふうなことを彼女に力説している暇そうな学生風の男子がいてげんなりしました。その隣で懸命に「ビッグ・イシュー」を売っているおじさんがいるのがすごく皮肉なコントラストを醸しています。おじさん、かっこいい。さあ、気を取り直して。

さて。まずは善国寺、です。実はこのお寺には、今年の初詣にも社長と仲間たちで訪れていて、そのときに御朱印ももらっています。だから今年は早くも2回め。ここのところいやなハプニングに見まわれがちな部内の厄落としも兼ねているので、どうぞよろしくとお参りをし、御朱印をいただきに行きました。ここで最後に勢揃いした七福神の「おすがた」を乗っける宝船も買えます。「おすがた」すなわちフィギュア、ですが、焼き物で出来ていて、ちいちゃくて可愛い。毘沙門様がにこにこ微笑っているのが、きちんと紙に包んであって、お守りなどを入れるような袋に入っている。新宿毘沙門様の由来なども書いてあるちいさな紙も入っています。

ここの眼鏡の、読書が好きそうな物静かなお姉さんとはもしかするとお正月にもお会いして、やっぱり御朱印を書いていただいたような気がしますが、覚えていないだろうなと思って声をかけるのはやめ、ストレンジャー、いかにも今日はじめて来ました、みたいなぶりっ子でお寺をあとにしました。ご本尊お参りだけで私がお寺からさっさと出てってしまうのも少し珍しいですが、寒いし先があるのでさくさく。

神楽坂をどしどし登ったり降りたりしていると、すれ違う人々は有閑マダム、お年寄りの団体、外国人、それにどうもお茶屋さんの女将さんらしい人、その取り巻き、学生の団体、というような層で、街の雰囲気がよくわかります。神楽坂は昔からお茶屋さんがたくさんあって、芸者さんが今でもいらっしゃるお店があるようですが、立ち並ぶお店もかなりシャレオツで、行ったことのない人はぜひ一度行ってみることをおすすめします。シャレオツといっても、六本木のような歴史の浅いものではなく、江戸時代からこんな感じだったんだろうな、と思わせる風情が良いです。京都にちょっと似ています。

次の目的地は市ヶ谷の大黒天。市ヶ谷、というよりも牛込というべきでしょうか。大乗山経王寺です。市ヶ谷柳町の交差点の近くにあるので、大久保通りを結構あるきました。「15分くらいです」と毘沙門様で教わったけど、途中で雀の会議を目撃して写真を撮ったりしていたので、けっこうかかりました。

大黒天では「三回振りながら願い事をすると叶うよ」というイベントがあり、参加させていただいた。ここでは別に部内の厄落としはひとまず忘れておいて、もっと文章が上達しますようにみたいなことを祈る。受付に出てくれたお姉さんは25歳ぐらいの、芸大に行っていそうな、ちょっとファニーフェイスのかわいい人だった。半纏が奇妙に似合っていて、座敷わらしっぽくもあったけど。大黒天さまらしい。

さて次は抜弁天にある厳島神社なんだけど、この路線はずっと「小滝橋車庫ゆき」のバスが走っていて、なんだか奇妙な気分になる。会社の最寄りのバス停にとまってくれるバスなのだ。頻々と走るバスのおしりを見送りながら、「今日は君らには、乗らない」と思うのがまた優越感を煽る。抜弁天の地名も実は親しみがある。市ヶ谷駅から職場まで、この路線を使って帰ると、通るのだ。

昔市谷本町というところに住んでいたことがあって、急いでいない帰りなどは、この路線をとおる九段下行きのバスがちょうどよく家のどまんまえに止まってくれるため、よく利用していた。抜弁天に親近感があるのも、そのためだと思う。靖国通りの街宣カーや、こぢんまりとして美味しい中華料理屋、駅前のお堀の清々しさ、などが一時、よみがえる。大黒天の原町からも歩いて10分程度だそうだが、例によって道道写真を取りながら歩いていたせいで、20分ぐらいはかかっている。

抜弁天の周辺には、七福神が固まっている。地名の由来ともなっている弁財天の厳島神社、寿老人の春時山法善寺、福禄寿の大久保山永福寺の3つ。厳島神社には池があって、緋鯉が4、5匹、寒そうに固まって微動だにせず、水底の方に身体を休めている。御朱印受付はお正月の7日までしかやっていません、とあったので、西向天神社のほうにいかなければならない。ひとまず弁財天にお参りしたのち、まずは永福寺のほうに。

永福寺はかなり大きなお寺さんという感じで、立派な墓地が併設している。檀家さんもたくさんいらっしゃるのだろう、モノトーンながらにあらゆる階調を取り揃えて、とりどりに見える墓石が林立している。

(以下加筆中)