日月星辰ブログ

Vive hodie.

自粛期間は、我々に時間的余裕をもたらし、内省の時間を与えた

 いったいどこでどのように消耗しているのかわからないが、出勤するとたとえずっと座ってダラダラと事務仕事をしているだけだとしてもとてつもなく消耗する。別段誰かにのべつに怒鳴られていたり、突き回されたりするような仕事ではない。どちらかと言えば人との会話も少なめで、強いて気になると言えば四六時中ラジオが付けっぱなしで集中が難しいことぐらいか。家にいるのと基本的な過ごし方の面では変わらず、家でだってパソコンの前でキーボードを打っている。オフタイムも、日曜日も。だから全然変わんないはずなのに、出勤するとヘトヘトに疲れている。

 私の上司は「この建物は磁場が悪い」というようなことをしきりと言っていた。いろいろな意味でそりの合わない上司なので、こういう見解にも反発を覚えていた。何が磁場だ。どちらかというと体育会系の上司が、磁場とかいう。悪い冗談にしか聞こえない。でも「磁場」とやらのせいにしたいぐらい、職場にいると疲れる。もちろん、大概の東京に住む社会人と同じように満員電車が疲労の元凶ではないか、という可能性もある。痴漢とかの実害は別に被らないが、なんていうか、人とミチっと密着した状態で、狭い箱に入れられて、まとまった時間、どこかへ運ばれること自体が拷問だとすら思う。歴史を振り返っても人間がそのように運ばれて行った先には地獄しかないというのが通例だ、と思っている。不法入国。奴隷市場。そんな感じ。

 しかしそんなそりの合わない、お世辞にも理性的とは言い難い上司の「磁場」説を信用したくなりそうなほど、疲れる。もう20年も勤めているのに、家に帰ったら30分寝転ばないといろんなことができない。三年目の新社会人でもあるまいし。

 

 そんな中、降って湧いたのが妙なウイルスだった。

 はっきり言ってその存在は鬱陶しい。困る。一片たりとも共存の道はない。撲滅がふさわしい。が、怪我の功名というにはいろいろな意味で問題がありすぎるが、まあ、家にいていいことになった。

 

 家にいていい。最高。

 

 自分で作ったご飯を三度三度食べられる。ベランダから漏れる暖かい光の中、すぐ横には疲れたら眠れる布団が敷いてあり、お気に入りの、大変に動作が機敏なmacminiとともに働ける。喉が渇いたら好きなものをのめる。そして何より、一歩も外に出なくていい。

 一ヶ月をこす自粛期間中に、だいぶん人間らしい生活を取り戻した。一年放置したブログにもこうして何か書く気力が湧いた。楽器の練習も毎日している。運動や散歩は、まあ天気がいい時だけ。ここのところ途絶えていた本を読もうという気力まで戻ってきた。

 いろいろなことをゆっくり考える時間さえできた。

 そういう時間を手に入れたことで、不安でいっぱいになる人がいる、と聞く。幸いにそこまで頭が良くないので、楽しいことばかり考えている。何より、時間に余裕があるというのがこれほどまでに素晴らしいことだったとは。別に三年ぐらい、旅行できなくったっていいよ。旅行好きだけど。

 

 あまりにうまくできすぎている。これは何かの罠なんじゃないか、と考え始めたが、なんのことはない、でかい罠なら市中のそこここに多分漂っているのである。新型コロナウイルスとかいうにくいやろうが。

 

 三食の写真を撮り続けている。

f:id:lubu:20200521204657j:plain