日月星辰ブログ

Vive hodie.

手塚治虫「人間昆虫記」を読みました。初読だったんですが。今の時代の気分に凄く合っていると思います。十村十枝子に感情移入できる女子続出じゃないかな。ラストの台詞なんてばりばり働いている独身女子(たとえば、カツマーみたいな)が呟くと凄く良いので使うと良いです。「私、ふきとばされそう…」。
 人の才能をあからさまに盗みながら、託卵でちゃっかり羽化するモズのようとも、蝶々の身体に卵を産み付けるジガバチのようとも思える生き方をだれ憚り無く堂々とする女。一昔前ならきいとなって大嫌いな女子ですが、この強かさ、悲しさ、かっこよさが分かる気がしました。強姦されて泣きながらも「こいつをどうつかってやろう」とあたまを巡らす美女、なんてもえーじゃないですか。しかも自分の売り方が巧妙。寄生することでしか権力のある男子と渡り歩いていけない、という切なさが分かる。いや、寄生じゃない。相手を頭から喰っているから、カマキリの雌のほうか。奇しくも十村の結婚相手が「鎌桐」とかいうです。示唆してるよな。
 婚活とかいうくだらない言葉に嫌気がさした女子は十村のかっこよさに酔うと良いです。自ら政略結婚してみたり、「子供なんて産みたくない、あたしはまだ幼虫なのよ」(だがこのとき多分もう20代後半)とか焦ってみたり、真逆を行きます。
 これが発表された当初多分、こういう女子が出始めで、それをどぎつく風刺したのだろうな、とは思いますが、いいかげんぐるっと一回りして、けっこんけっこんと躍起になるのが流行だなんてばかばかしい今読むと、いっそ励まされそうな、そんな作品です。

婚カツ!、史上最低の視聴率だそうですね。私はテレビをみませんので、どんな話かは知りませんが、なんか分かる気がした。だってこれさ、どう考えてもマスコミが煽っている言葉だもん。結婚ってもう少しこう、デリケートな問題じゃない? そのくせ上司が女子の部下に「君、結婚はまだなの?」って言ったらセクハラらしいのにね。変だよね。

・同時に「草食系男子」などと言う言葉もさっさと滅べばいいと思いました。まったくの草食系なんているはずもなく、地球温暖化であれの大きさがどんどん小さくなっているワニの話じゃないんだから。人間も地球温暖化の影響でメス化してるんですかー。
 草食獣にだって失礼です。草食獣にだって猛獣はいますよ。古来「精力の象徴」とされた馬だって草食獣じゃん。

・久しぶりに夏目漱石硝子戸の中」を再読しました。漱石先生がものすごく人間関係に巧みというか、ものすごく気配りが聞いていて、だから百年を超えて愛されるんだろうなあ、と思いました。なんていうか、文章からみじんも驕慢なところがにじんでいないのでした。といって、知識人や達観人ふうのところもない。じゃあ晩年らしく涸れているのかというとそれはあまり感じられません。色気はこれでもかというぐらい立ち上ってくるのです。