日月星辰ブログ

Vive hodie.

おすすめ読書:「三国志」の政治と思想

最近のはまりのお菓子は、「岩塚の黒豆せんべい」です。脱兎です。

三国志関連書籍って、手に入りやすいものといったら「三国志入門」とかそういう、いかにもな感じのあれか、そうでなかったら小説のたぐいしかないなあ、という個人的な不満があったのですが、最近はそうでもないようです。

この本、「『三国志』の政治と思想」は講談社メチエ、というわりかし手に入りやすいシリーズで出ています。お値段もさほど高くなくて、1700円です。学術書でまじめなやつを、例えば三笠書房、とかから買おうとするとおめめがとびでるあれですので、ぜんぜん安い方に入る、と思います。

いわゆる、「軍師」層、と呼ばれた人々(が多いのでそういうことにしておきますが)が所属していた知識人階層/名士層と権力者との関わりを描いた論文で、示唆と刺激に富んでいました。

個人的に認識を新たにしたのは孫呉についての記述と、孫権の地位のお話で、史書を持っていても通読していなかったので、特に孫権という人物の微妙な立場についてはいろいろ考えてしまいました。漢王室に敬意を払ってはいるのですが、周瑜存命中の彼の立場は「討虜将軍」。合肥における臧覇や李典と大して変わんないあれです。こういうところは私にとってなにやら新鮮でした。

あと、蒼天航路ではいいかんじにぼやかされていたあの「荀イクの謎の死」についても、容赦なく「曹操に寄る自死の強要」みたいな解釈になっていて、むろんそれに関する理由付けもしてあるのですが、まあ本来のところはそうなんだろうな、と妙に納得した次第です。物語とはべつの、生身の曹操荀イク劉備孫権がたち現れてくる、1700円にしてはずいぶんコスパのよろしいお買い物でありました。

あとね。

この本ですげえ使える、というところは256ページ以降の附表1〜6です。魏/蜀/呉、各政権ごとの人的構成(つまりすなわち、「幕下に加わった人々」)がまとめてあります。もちろん、「列伝に記載がある主だった人々」に限られますが、「どいつとどいつが同期」とか「この人とこの人は出身地が一緒」みたいなあれがわかりやすくまとめてあります。このヒョウを利用しない手はないね。ほんとに。

まじおすすめ。