日月星辰ブログ

Vive hodie.

シン・ウルトラマン 感想

見た日:2022/05/13 18:40始まりの最終回だった

 

IMAXでかなり前の席だったせいで、画面の印象はちょっとちゃんとついてけてるのかわからない。特に、人物の極端なアオリとかはもうこっちの視点が悪いのか、向こうの絵作りがクセツヨなのかさっぱりだった。

 

リアリティ重視の空想科学シリーズ 第二弾だけども、もう少しファンタジーより。それでも役人と自衛隊はどうしても書きたかったんだろうなと思った。ウルトラマンといえば子供たちが必ず出てくるが、シン・ウルトラマンは子供不在である。かろうじて神永が「ウルトラマン」として覚醒するきっかけに、無名の小学一年生(黄色いランドセルカバーをかけた小学生は1年生だという、昭和の思い込みがあるな)がある意味キーパーソンであるに過ぎない。

 

子供が登場することで、空想感に説得力があった原作に比べて、あと一歩で茶番になりそうなぎりぎりをなんとか現実に引き止めてたのは私は浅見さんだと思っている。Twitterでお友達とも話してたんだけど、ほうぼうで「批判」されていた、彼女が自分のお尻を自分で叩くシーン、彼女が防災庁なんてところに配属されるまで、ホモソーシャルな世界でどう生き延びてきたかを彷彿させるいいモチーフだと私は思った。

長澤まさみをキャスティングされる美女が、大卒か院卒くらいであの世界に入って、苦労がないわけがない。時にはシビアな現実に打ちのめされそうになったこともあったろうし、劇中で自分が神永に求めたように、お茶汲みを強要されたこともあったろう その度に尻を叩いて自らを鼓舞してきたのでは--というのが、われわれの見立てである。

 

ああいうオヤジ風の女性は庵野秀明の好みなんじゃないの、とか、樋口監督がiPhoneを使って撮った(多分 インタビューで読んだ) 視点が近すぎる映像などに「セクハラじゃないの?」とか言っていた人はその発言こそがセクハラなんじゃないの、と言いたい。脚本家が気の強いオンナが好みかどうかなんて知らんわ。理想的オンナとしてはいささか歪になってしまった浅見さんは、同じく20の時より「社会に揉まれてむ歪んでしまった私--キャリア中年女子--には大いに納得のいく人物造形であった。それはもう少し若いがシン・ゴジラのカヨコにも感じる、文脈の上で匂わされる壮絶である。その一点だけでも作ってくれてありがとうとなる 抑圧に大いに悩み、それでものし上がり、そして苦しむ女をこんなふうに描くんだな、と。

 

それを「セクハラ」で片付ける方が発想がもう、すけべオヤジ。

 

あとはやっぱりみんな言ってるけどメフィラスにハートを射抜かれた。山本耕史は「鎌倉殿の13人」の三浦さんの演技がとても好きだが、輪をかけて彼の得意を活かされてるなと思った。メフィラス星人、人間の造形の趣味いいねきみ。飲み屋のシーンで枝豆を食べ、日本酒を飲んでるが、それらが石ころと泥水でも同じ演技しそう、というか。

40代以上の役者さんによる人外演技といえば、「夏への扉」の藤木直人も良かった。なんていうか、演技ウマで叩きのめされる快感。亀の甲より年の功。お二人とも人工物のように顔が整ってるが、整ってなくてもそれはそれで周到に役に迫ってくれそうな。

 

劇場を出たわたしがまず一番に思ったのは、「メフィラス星人のぬいが欲しい」であった。人間バージョンじゃなくて、ガワの方で。

 

一緒に行ったお友達と、有楽町のガード下の、もつ焼き屋でいっぱい飲んで帰った。せんべろ、私の好きな言葉です……