日月星辰ブログ

Vive hodie.

三島由紀夫「奔馬」

奔馬―豊饒の海・第二巻 (新潮文庫)

奔馬―豊饒の海・第二巻 (新潮文庫)

奔馬奔馬と言い続けてやっと今日、読み終わりました。最後の一文は日本の文芸史上に残る名文だそうですが、三島由紀夫作品って終始こんなもんじゃないかしら。どこを切っても名文ですよ。
この2巻目を読んで初めて、「豊饒の海」の「豊饒の海」たるところが分かることになっている筈で、思うに「春の雪」だけ映画化したってしょうがない、もしかして「指輪物語」みたいに4部作全部映画化するつもりかしら、それだったら勲たんはともかく本多さんは、鬼頭中将は、とやかましげにさえずりたくなるところですが、そう言う話はとりあえず黙ります。鬼頭中将は誰にもまして蒼天張遼だからね(実写じゃない)。本多さんは良い眼鏡だったら誰でも良いです。
 高校生の時に「春の雪」をすこし読んだ事があったのですが、あのときは瞬時に挫折してしまったのは、「鹿鳴館っぽい」「どうせ貴族のつまらん話だろう」と未熟な読書体験から生意気にも思ってしまったのがしょうもない理由で、ああ、無駄をしたなあもったいなかったなあ、と思います。しかしまあ、あのとき無理して読んで「やっぱりつまらなかった」となるよりは今読んで楽しければ良いと言う気もします。
 今回、一番うるっと来た場面は、やっぱり大詰めの裁判シーンでした。下宿屋のおじいさんが。2度言いつのる、というところが。ああ。なんかあそこでむやみに泣けました。良かったねと思いました。でも本多さんのためによかったのか、きよあきのために良かったのかは未だに不明です。
 ああいう宿命と人為が交錯するシーンに弱いです。