日月星辰ブログ

Vive hodie.

シェイン 世界が愛する厄介者のうた 感想

映画.comの試写会募集で当たって見た!

見た日:5/23 19:00 渋谷のユーロスペース

 

ロードショーは昨日から。

https://longride.jp/shane/

 

行きがけに道玄坂あたりを歩いてて、終わったらここで飲もうあそこで飲もうと思ってたけど、終わってみたらどこも怖そうでやめた。

昔あのあたりにゴールデンカムイ軒やったジビエレストランがあったんだが、そこはもうもつ焼き屋になっていた。

 

アイルランドの民謡音楽をポップとしてブレイクさせて、アイリッシュここにあり、と世界に宣言した男、シェイン・マガウアン。バンドもいくつかあって、その仲間たちもまたバンドの中ではそれぞれ重要な役割があるんだろうが、なぜかバンドというのはリードシンガーがアイコン化されがち…な気がする。シェインは自ら作曲も作詞も手掛けてるので、当然彼=ポーグス、という感が強い、のか。

アイリッシュがイギリスでいかに住みにくいか、差別されてるか(アイルランド人は乱暴で飲んだくれ、という偏見があるのだそうだ)、アイリッシュとして誇りを持つにはどうしたらいいか--といった、ちょうどゴールデンカムイ完結に伴うアイヌ表現についてのあれこれで、少数民族の差別との戦いについての関心が高まっていた頃なので、いい映画に巡り会えたな、試写会応募した過去の私ありがとう、というきもちで。

冒頭のアニメーションで語られるシェイン的世界観--でもう感極まってうるっと来たので、当時の私は相当参っていたんだと思う。

 

失われた、あるいは失われそうになっている文化に命を吹き込む。飢饉に追い詰められ、主にアメリカに渡っていき、故郷を捨てざるを得なかった人々に、故郷を思い出す歌を歌う。そういう宿命を負わされた一人の天才である。6歳から飲んだくれていようがなんだろうか、シェインはアイルランドの文学を愛する教養人でもある。そういう素地と、飲んだくれながら聴いていた歌が、彼の歌のベースだそうである。

ポーグスが売れ、方々でライブが企画され、テレビに引っ張り出されてはしゃべらされ、「常識人」にはアイリッシュの面汚しだ的なことまで言われ--それでも全くルーツの違う一アジア人の私にすら響く音楽として、アイルランド民謡を換骨奪胎させたのはシェインである。なんもせん人が彼を責める権利があるとも思えない。それでもまあ、言われるでしょうね、とは思った。

まずインタビューに答えている現在のシェインの体はボロボロで、もう足は立たず、車椅子に乗っている。長年のお酒とタバコ、ドラッグでぼろぼろなんである。若い頃から(どうも今も、らしい)モテモテ。言葉遣いは野卑で乱暴。世間のお綺麗な真面目人間が避けたがる類であることは間違いない。私ももし彼に単独インタビューできるよと言われたら腰が引けてしまいそうだ。インタビューされてる人の中には、ちょっと真面目そうな人もいたな。妹さんとかはお兄さんを理解してるみたいだが、もっとなんというか、普通だった。自らまるでごろつきのようになって、身体も心もヘトヘトになって、なおアイリッシュのことを考えながら、ギギギ(あの笑いかた! 見慣れてくると愛らしく感じるところ、、さすが人たらし)、と笑う男。

現代の社会では、天使というのはそういう顕現をするのかもしれない、とまで思いながら映画を見たあと、ポスターの中のシェインが聖人の格好をしていることに気づいた。

 

映画自体のプロデューサーも務めたジョニーデップの対談パートも何回か出てくるけど、なぜかシェインの前ではジョニデもツヤが消えている。そういう撮り方や編集をしてるんだと思うんだけどね。