日月星辰ブログ

Vive hodie.

アニメ:ODD TAXI(オッドタクシー)をアマゾンプライムで見ている

仕事終わりに30分だけ、という感じで。

 

少し前にTwitterでフォローしている劇作家の方が「面白い! 一気見しちゃった!」とおっしゃっていたので気になって見始めた。4月からテレビ東京で放送していた*1いるそうだ。その時巡り合っていたらまたちょっと見方が違っていたかもしれない。

 今「いつでも見られる・やめられる」という状況で毎日1話と決めて見ていると、4話:田中革命は衝撃的かつ辛かった。

 小学時代、平凡さに飽きたらない野心もまた人並みに持ち合わせていた田中は、「瞬間風速的に」流行ったレア消しゴム集めにハマる。クラスの一部の男子が見せ合って自慢しあうのだ。キン肉マン消しゴム(通称:きんけし)世代の40代50代にとってはついにやりとしてしまう話。きんけしは一つのジャンル内での争いであるが(小学生の流行の場合、わりとそうやってあえて狭めた世界で争っていくのがブームとしては定石かなと思ったが、東京周辺などの都会では私が暮らしていた愛知県とはまた事情が違うのかもしれない)、形が面白ければ海外のものでもなんでもいいらしい。

 渦中、田中少年はネットで偶然レア消しゴムを見つけてしまう。

 マニア同士の序列はいかにレアなものを持っている/知っているか、で決まるところがある。田中少年も勝ちたかった、ただその一点で、大それたことをしてしまう。

 その、幼少時の記憶が元で、平凡なゲーム会社の会社員だった田中がずるずると倫理の壁を転げ落ちていくという筋立てである。

 いろいろな要素が脳内を駆け巡った。秋葉原で無差別殺人をした男や、京都アニメーションのあの悲劇も、当然想定しての筋立てだろう。平凡な男の野心(虚栄心、とはまた違う気がする。見栄というよりもどんなにくだらなかろうが田中の求めたものは本物の栄誉だ)が生む転落。「無敵の人」。

 「無敵の人」は私たちとは違う、というのがどうも一般的な認識らしい。軽く検索して出てきたこの2019年のこの現代ビジネスオンラインの記事では、「無敵の人=異質の人」と捉えることの危険性に警鐘を鳴らしている。

gendai.ismedia.jp

「自分はなりようがない」というバリアが存在すればこその「無敵の人がやった」なのだが、田中はむしろ平凡な一般男性である。会社にも勤めている、教養もある。独身ではあるみたいだが、少なくとも「何もかも失った男」ではなかった。ゲームに10万円を息をするように課金できる男でもある。

 そういう人でも、いとも簡単に「むこうがわ」に落ちる、ということを百言を尽くすよりもまざまざとわからせてくれるストーリー。「無敵の人は異質だから、って差別すんなよ。自分とは違うとか、思うなよ」って言葉で言うよりも身にしみてわかる。「あいつはちがうから」と無差別殺人犯の所業を外側から眉をひそめて見ていた我々だって田中のように他人から見ればごく些細なきっかけで心を崩して、いとも簡単に「むこうがわ」にいくかもしれない。

 

 そんなことを考えた。

 

oddtaxi.jp

 ご興味があれば。各人の外見を動物にしているのも皮肉が効いているのだが、私としては70年代や80年代の動物擬人化作品を思い出してノスタルジーを感じる。

 きんけし的な話が盛り込まれるなど、視聴者は幅広く想定されているのでは、と思う節もある。小戸川さん柿花と同期とか言ってましたよね、確か…(41歳の設定だ)。

 小戸川さんに声を吹き込んでいるのが花江夏樹というのも面白い。抑えた演技で41歳を表現しているが、ちょっとかわいい響きもあって、そこがまた小戸川にふしぎな魅力を与えている。

 

 小戸川さん…ご無事で…。

*1:うっかりというかなんというか、4月に始まったアニメだから6月現在も放送中である。