半年ぐらいかかって、ようやく「2666」を読み終わった。
半年と言っても、実際に読んでる日の計算で、Twitterを遡ったところ購入したのは2017年3月だった。なんとか4月17日までは途切れ途切れながら読んでいたらしいが、その後長らく「積読」状態であったことを告白しておく。足掛け3年だ。「批評家たちの部」「アマルフィターノの部」が終わったところで、放っておいた(のだと思う)。年が改まる際に今年は本をたくさん読もう、と毎年のように誓いを立て、「読書リスト」を作成する。2月ぐらいまでは熱心に読んでいるが、一ヶ月に10冊程度の進捗具合に嫌気が差して、3月になると若干トーンダウンする。
さて今年も4月上旬まではほとんど書物に手をつけない期間もあり、一時は文章を書くのすら億劫になっていたが、転機はやはりあれだった。緊急事態宣言。本棚の狭くもない場所をでんと占領している本書に手を伸ばそう、と思ったのはしかし、ゴールデンウィーク明けだった。
で、ようやく今日、読み終わった。まずは1回目が。
登場人物だけでも物凄い数出てくる。その上、事実関係が実に有機的につながっている。筋を追うだけでも十分一苦労で、一筋縄ではいかない。その上訳文は決して簡単ではない。でも、読書体験は心地の良いもので終わった。
凄惨なシーンもたくさんあるし、「犯罪の部」ではいやって言うほど人は死ぬ、暴力と殺戮を延々と読まねばならない。そこを超えたところでいいことはあまり待っていない。が、最後まで読むと「分厚い本読んだった」以上の何らかの感動がある。
「犯罪の部」で登場する霊媒師のような女性のように、とにかく本を読むことの楽しみみたいなものを思い出す。
この読み方は決して賢いものではないだろう。けど、とりあえず一読ではそんな感想である。
中でいろいろ美味しそうな食べ物、不味そうな食べ物、普段の食べ物、ご馳走、いろいろ出てくるのも印象的だったが、解説によるとそれは確かに「ポイント」の一つのようである。
私が「食べてみたい」と思って作ってしまったのは、アルチンボルディが作家として見出された記念碑的な夜に、出版社社長ブービス氏が足跡で作ってたお夜食である。
少しのあいだ、ブービスは妻の、ラファエル前派の絵画のような寝顔を見つめていた。その後、ベッドの足元から立ち上がり、ナイトガウン姿のままキッチンに行き、イギリスにいたときオーストリア人の亡命作家が教えてくれたレシピのとおりに、チーズと酢漬けの玉ねぎを挟んだサンドイッチを作った。
「こういうのはすごく簡単に作れるし、元気が出る食べ物なんだ」とオーストリア人は言った。
これ。今日のお昼に作って食べた。
オリーブのピクルスはアレンジ。