日月星辰ブログ

Vive hodie.

何度も同じ映画を見るほどヒマじゃないんじゃない

お題「何回も見た映画」

 

いつの間にかはてながまるでソシャゲみたいになっていた。嫌いじゃないどころか、ノルマを課せられるとついやってしまおうと意気込んでしまう。実際にすべてを達成することはごく稀である。

 その昔、乙女の集った同人サイト界隈では「100のお題」というものがあった。今なら、Twitterの診断メーカーであろうか。不思議な事に、絵のサイトよりも小説のサイトで、この「お題」ブームは盛んだったように思う。私も未だに引きずっている100のお題がある。時たま思い出したようにやってみようとしては中途半端で投げ出しつつ、そろそろ8年ほどが経とうとしているが、まあいいじゃないかそんなことは。

 

 同じ1本の映画を何度も見ている人、というのも近頃ではさして珍しくなくなった気がする。映画1本1800円、というのもあまり問題視されていないどころか、物によっては2000円以上するそうじゃないの。そんなもの、よく何度も何度も見るよね、正気の沙汰じゃない、というよりも、すごいね、映画ファンだねかっこいい、みたいな感じで受け止められている …のだろうか? まあ、オタク界隈では少なくとも「熱心な俺」「キモオタかっこわるい」が裏返って密かな自慢になっているような気はする。

 

 私は、ヒース・レジャーがあまりに役にのめりすぎて命を落としたというクリストファー・ノーラン監督版の「バットマン」3部作の2本め、「ダークナイト」を何回も見た。白状すると、それ以外の映画はそれほど何回も見てない。ノーラン版「バットマン」も、ビギンズもライジングも1回きりだし、同じくノーラン監督の「インセプション」も1回か2回くらいだったかな(2回見たのはよくわからなかったからである)。

他に何度も見たのはだいたい「よくわからなかった」という理由であり、「裏切りのサーカス」とかも好きなんだけどよくわかんないから劇場で3回見てDVD買いました。DVDを買うのは「なんか好きだしわかりたいけど劇場だとメモとか取れないしストップモーションできないので仕方なくメモ代わりに」というケースも多い。

 が。が。「ダークナイト」な何故か非常に「刺さった」。好きな俳優が出てたわけでもない。ただひとつ、少し期待があったとするなら、子供の頃に珍しく名古屋の劇場で見たティム・バートンの「バットマン」が意識の奥底にこびりついていた。死んでなお馬鹿笑いを残すジャック・ニコルソンのジョーカーがとても恐ろしく、今見るとなんてこと無いんだけど、とにかくものすごく怖かった思い出がある程度で、まあ、「バットマン」ならアメコミでもみてもいいかなくらいのものである。今でもたまに考えるのだが、未だにどこが一体「刺さった」のか、よくわからないけど良かった。できれば実際に病院が爆破されたシカゴに行きたかった。シカゴはかなわなかったけど、別の理由で「自らの趣味のためには散財を辞さない」友達とハリウッドまで行った。コスプレの人にレイチェル・ジョーカーごっこをしてもらった(1ドル払いましたけど、あれで1ドルというのは高いのか安いのかわからない。結構遊んで貰える)。ワーナー・ブラザーズの博物館でジョーカーのコスチュームをすごい近くで見たり(匂いを嗅いだり)、「WRITER」とか書かれたマグカップを買ったりした。なかなか痛い。

 あの作品は徹頭徹尾、割りと気が抜けず、間延びもせず、見終わった後すごい長くてエキサイティングな夢を見て目が覚めたような感じで、寝汗をいっぱいかいていた。寝てないのに。結構長い作品だから、ぜったいどこかで中ダレするだろと思ったけど、しなかった。だいたい長い作品って途中で時計を見ちゃうくらいせっかちくんなんだけど私。すごいな、天才や、ノーランさんすげえ、などとひとしきりしゃっくりみたいにびっくりしながら、帰路についた。水曜日の、レイトショーの、新宿ピカデリーだった。すでに映画は公開されてから数週間が経ち、興行もさほど良くもなく、ロードショーは粛々と、ひっそりと、終わろうとしていた。その矢先。