日月星辰ブログ

Vive hodie.

映画 キングスマン

予告編を一度きり見ただけで、「これは見ねば」と思っていたのですが、公開日からしばらく経ったあとにのそのそと足を運ぶ仕儀になった。

 

あらすじをご紹介するとあまねくネタバレになりそうな筆運びで、いわゆる「よく出来てる」部分もあり、かと思うと相当ラフに描かれている部分もあったような気がします。「成長・継承譚」としてはいっそシンプルなプロットなんだけど、モチーフが凝っている。

 描いているものは若干アナクロな、でも相当ハイテクな「英国スパイ」。先日読んだ「キム・フィルビー」によれば、英国スパイというのは超エリートの世界らしく、庶民にとっては「スノッブでいけすかん」人々ということになろうか。それを、なにせ英国王を演じられるサイコーに洗練されたコリン・ファースが演じる、という。

 アクション俳優というと相当最近まで、汗臭くて知能というよりは肉体、というイメージでしたが、コリン・ファースにみっちりアクションを演じさせた、というのが多分この映画の肝なんだと思う。

 日本だって格差社会だなんだ、と言われるけど、英国はもっと長年の伝統としての階級が残っており、家柄、話す言葉、住むところ、ひいては選ぶ職業までしばらくがっちりわけられていたそうで、だからこそ、「マイ・フェア・レディ」みたいな物語が実感を持って語られるのでしょうが、逆に言うと様式と資質さえ身につければ、「誰でも紳士になれる」というのがこの映画のテーマらしい。監督のマシュー・ヴォーンはウィキペディアによれば実は英国貴族の末裔だそうで、俳優も上流階級の出身の人が多いあの国の「演劇」の伝統はやっぱりすごいなと思う。日本だと「河原者」といわれる芸能の世界が、あちらではけっこうノーブルなものなのかな。