日月星辰ブログ

Vive hodie.

アンナ・カヴァン

…お風呂で読む作品じゃないってコトだけはよくよく分かった。


どこへ逃げても逃げきれない閉塞感。求めたものを手に入れる間際にするりと逃げられる徒労感、絶望、迫り来る理不尽な恐怖。
おまけにヒロインもなんかね、…決定的に暗いんだ、この子。ホント、気が滅入るぐらい、暗い。傷つきやすく、何一つできず、不安定で、庇護するしかない。生まれたてのヒヨコみたいな子なの。いや、生まれたてのヒヨコの方が良い。ヒヨコは少なくとも、生きる力にあふれているもの。
白骨みたいな少女なんだな。この子は。
主人公も陰気な感じなんだけども、この子のためには地球の裏側まで行くし、青い目をした権力とも戦う。初めのうちはそんなそぶり見せないけど、相当ハリウッド的な人だ。でも、だから余計、この作品の悪夢めいた徒労感が際だつ気がする。意志と行動力をもってしても、今ひとつ「得た」という高揚がない対称を追い求める主人公。このパタンは悪夢の定石だ。物語に定石がいくつか存在するように、悪夢にも定石があって…逃げられる夢、逃げる夢、さまよう夢、そのいずれのパターンもこの作品にはちゃんと入っている。
大汗をかいて夏の夜、目覚めるような。その後しばらく布団のなかでじっと息を潜めるような。そんなかんじ。