日月星辰ブログ

Vive hodie.

誰かと分かち合いたい!のに!

上手く表現できない「ダークナイトもえ」。そもそもいままでがちがちの2次元おたくだった人間には、実写のすげえを表現することばはないというのか…いな! いな!

すごく有名な人から普通の人まで、レビューを読みまくったけど未だ足りません。もう一人自分がいたら…。まったく感性が同じ人間と3日ぐらい徹夜をして語り明かしたい! 私は賈文和@蒼天航路どのほどKYに語りはできないからね。聞かせる技術もないし。
となれば、もう一人の自分ですよ。ああ、どっかに転がってないかなドッペルゲンガー
面白いのは、どんなレビューを読んでも、「ううんなんか違うんだよ!そうじゃないんだよ!」となってしまうという珍しい現象。尊敬する某ゲームデザイナーが「ジョーカーはテロ国家の隠喩」とおっしゃっていても、大変大好きな某評論家が「偶然が重なって二度と取れない最高傑作」とおっしゃっていても、どこか満足しない。といって、「おもしろかった」「すごかった」じゃお話にならん! ならんのだ!

私がすごく感銘を受けたのはもちろん、ヒース・レジャーのジョーカーというものすごさというか、魂の爆発もそうなんだけど、巧みすぎる脚本ですよ。「無理がある」「どうしてジョーカーを誰も打てないの?! 殺せないの!?」最たるものには「ジョーカー一人であれほどの計画犯罪がデキルのがおかしい」とかいろいろご意見を散見しましたが、ちげえ! ちげえんだぜ!(突如キレる)
以下 華麗に ネタバレ






まず。「なぜ皆ジョーカーを殺せない?」ですが。
ジョーカーはその点巧みですよ。
命を命とも思わないギャング達の所に乗り込む際には周到な計画を施しています。手榴弾スーツを着込んだり、仲間を敢えて盾にしたり。あと彼は意外と「出現する場所」を選んでいらっしゃいます。人質を巧みにつかったり、策を弄したり、また彼の場合、特にギャングサイドから見ると「殺しても特に得はしない」どころか「損をしたり被害を被ったりする」という布石をちゃんと打ってあったりします。分け前の問題だったり、バットマンがらみの損得の問題だったり。結局誰しもが頭の中で一瞬、計算をし、よりによって間違った判断を下す。そのミスディレクションの巧みっぷりを見事に演じきったヒース・レジャーと素敵台詞を考えたノーラン兄弟がすごい。
 ジョーカーは時にすごく威張って見せたり、逆にものすごく卑屈になって見せたりして、巧みに人の心に「損得勘定」の隙を与えているのです。もちろん、そのたびに華麗に裏切ってみせるわけですが、判断に時間を与えず、ギリギリの選択を突きつける言葉巧みさに、つい利己的になった人々はやつのことが殺せないんじゃないかなと。そんな普通の人たちの「薄汚さ」を透かし彫りっぽく描き出したのが今回の映画のやりきれない暗い部分でもあるわけですが、個人的にはそんなところも含めて大好きです!
人間が、薄汚くわさわさと生きているようなドラマは、綺麗事ものよりもずっと好きです。バイタリティを感じるじゃないか。

 そんなことより私は「ジョーカーはなぜ過剰な人殺しをしない?」のほうが気になりましたが…。
 ぱーちーのシーンとか、セレブ数人殺されてても良さそうだし(窓からおちるレイチェルを救った後、誰がジョーカーを止めたのか?? 警察の気配を感じていち早くずらかったの?)、クライマックスの病院から逃げるところだって、人質にもう少し死人が出ていてもおかしくないんですけど。…ああ、それはやつなりのこだわりか。あえて、「SWATにやらせる・もしくはバットマンにやらせる」っていう。
 無辜の人間を殺しちゃう高潔な人間、というシチュエーションを作るだけのために割と命がけのジョーカーさん…。
 すごいいやがらせ。
 
 しかし、となると。病院から避難するバスの謎はこれで解けましたけど、ぱーちーのシーンの件は納得行く解がみつからない!手下もいるのに!
 一つ考えられるのは、後のジョーカーの台詞から(それもどこまで信じられるかは置いておいて)、「ある時点まではハービーがバットマンだと思ってた」っていうあれね、あれから推測すると、ハービー=バットマンもレイチェルも取り逃がしたからこれ以上ここにいる必要はない、と判断した、という仮定ができるかと。うーんでもねえ、あのキレル子がよもや本当にハービーをバットマンと思っていたかどうか、怪しい気もするのよね…。でも一応、ずらかった理由はこんなあたりで推測していますが、どうか。

 あと、「ジョーカー一人でデキルことにしては規模がでかい」ですが、なにシンプルです。
 マローニさんのことを忘れてはいけません。
 マローニとジョーカーは多分、バックグランドでねっとりと繋がっています。いやなかんじで。もっともマローニは「使ってやってる」と思ってるだろうし、ジョーカーは「組織力を生かし切れない間抜け」と思ってるでしょうけど。
 お金を焼いちゃうシーンで「俺がボスだ」と息巻いてますけども、ボスになる気もあんまりないんでしょ、としみじみおもいました。マローニみたいな「まともなボス」と共謀できたからこそ可能な犯罪、というわけで、病院爆破とかフェリーのからくりとか、そのあたりの文句はマローニに言ってあげてください。おそらくマローニは…ジョーカーのたくらみを逐一よく知っていて…その舌先三寸にのり、バットマンを謀殺する(しかも自分は手を下さずに!)メリットと狂犬にバカにされるデメリットを両天秤に書けて、前者をとったんでしょう。マローニとジョーカーがどんな場所でどんな風に陰謀を練っていたのかとか考えていたらだんだんどきどきしてきました黙れ。アーカムの患者を手勢に加えるアイディアはジョーカーのものかもしれませんが、それを手引きしたのは多分マローニ一味、とか。

いくらジョーカーが舌先三寸でも、やっぱりスポンサーはいるだろうよね、ということで私はマローニがかなり強力なバックアップをしたんだと考えます。マローニもいい加減海千山千の嘘つき野郎ですから、バットマンに二階から落とされようが、それで足をぼきりといってしまおうが、自分とジョーカーのつながりについては上手く言い逃れているのではないかしらと。「やつに友達なんていない」はまさしく本当なんでしょうけど、あんたが、意図的に、飼い慣らしている(つもり)なのは確かでしょうに。もう。マローニめ。

嘘つきっぷりといえばジョーカーの嘘つきがやっぱりすごく巧みで、うん、もう台詞なんてひとっかけらも信用できないんだろうけど、一番すごい嘘はやっぱりアレですよ、「橋にはご用心」というやつ。フェリーに詰め込めるだけの人を詰め込みたい意図がバレバレ。なんか本当に橋には何も仕掛けてなさそうなんだもんあの人。でも「ぎりぎりでばれない嘘」をつき続けることで人々の恐怖心を煽り「やつはやると言ったら本当にやる」という方向で信じさせ、「でもよく考えたらこれとこれは嘘だったんじゃないの?」というあたりの疑問を差し挟ませないその巧みさが。脚本が。たたみかけるように凶悪な罠を仕掛けまくり、冷静な判断力を失わせるたちの悪さをああまで完璧に書かれるともう。たまりません。でもこれもこんなに良い脚本をあの緊張感で演じきったヒースジョーカーがいなければお話にならなかったに違いない。途中からアーロン・エッカートふんするトゥー・フェイスまで巧みに絡んでいくこの「陰謀合戦やりたいほうだい」のタタミ掛け部分がもう、大好きです。すげえ! 
 無論、名台詞もふんだんに用意されていて、I.complete.YOU.はむろん、すげえなその台詞!というかんじなんですけども、もうWhy so serious?なんてWSSとか略されて流行ってしまえばいい。前作はアルフレッドの台詞に好きなのが多かったけど、今回はジョーカーだな! 

ぱーちーのシーンのスクリプトを読んでいたら、勝ち気なレイチェルのことを「そういうの好きー!」って叫んで有頂天のジョーカーに、バットマンが「You are going to love me.」とかいってるのね。…しゃれのわかる男になったもんだな、バットマン、ってここ笑うとこじゃない、って?