日月星辰ブログ

Vive hodie.

童貞王

 国書刊行会はとにかく装丁が素晴らしい。

 

 解説によれば、人物はそれぞれ、実在の人物にモデルがいる。狂王ルードヴィヒ2世が清らかな美青年として描かれるほか、「グロリアーナ」という歌姫も、リジという王の幼なじみも、それぞれ実在のモデルがいるそうな。作中、「ハンス・ハマー」というなんとなく「鈴木太郎」っぽい感じの名前になってる音楽家が、ワグナーらしい。

 実際にスキャンダルや政治闘争を別名に仮託して作家が描くときには、その目的が風刺だったり、体制批判だったりすることが多いのだろうけど、この作品については狂王と呼ばれたルードウィヒ2世の擁護とも取れるように思える。聖杯伝説やユニコーン伝説を例に出さずとも、ヨーロッパでは童貞も処女も崇高かつ、なにかしらの魔力を伴うようであるから。