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日月星辰ブログ

Vive hodie.

読了本めも:『リリエンタールの末裔』

上田先生がキンドル版だめって言うはずない! って

 

上田早夕里のSFの根本的なところに、「人類の科学技術に対する敬意と愛着」がありますよね。

たとえ不気味な「ルーシー」になっても、第2の脳を宇宙の遥か彼方に飛ばす羽目になっても、それによって滅亡が待っていても、人類が自然に対して果敢に挑戦していくこと自体をいとおしんでいる、というか。

「華竜の宮」後の短篇集ということで、そういう観点はこの本にも随所に見られます。自然や過酷な状況に立ち向かうために投薬を続けた末に背中から変な腕が生えちゃった民族とか、科学技術との融合の末に非凡な感覚を手に入れてしまった男とか、そういう人を肯定的な目で捉えて描いているところが、いい。

 人類の科学技術に対する安易なペシミズムがなく、それでいてその行く末を見つめる目は冷静、史実とファンタジーをさり気なく融合し、短編でも惜しげなく魅力的なキャラクターを投下してゆく、なんていう、なんて真摯な語り手なんでしょう。

 大人のSFってこういうことだよな、と思った次第。