日月星辰ブログ

Vive hodie.

月初ですから

10月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:4037ページ

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
冷凍睡眠、エイリアン、超高速移動が当たり前の世界での、3編の物語。しかもこの3つのストーリーは「何世紀も前」の出来事、というスケール感。SFらしく、スペースオペラ風味のところもあるけれども、根本的な問題提起にはハッとさせられる。自分と違う文化や習俗、見かけを持った人々に対する差別問題や、「人間とはほかの文化的生き方」の仮設などは、決して子供向けの主題じゃない。それから興味深かったのは、エイリアンたちの性の多様性を描く感覚。3つの短編とも「性/生殖」の問題が描かれているのは、作者が女性だからかもしれない。
読了日:10月29日 著者:ジェイムズ,ジュニア ティプトリー,浅倉 久志,ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)
非常に押さえた、淡々とした筆致ながら、いや、だからこそ、これは嘘なの? ほんとなの?と、この人は味方なの? 敵なの? にあっさり翻弄される300ページ。冷戦の情勢と当時のヨーロッパの緊張についての知識があればさらに楽しめるが、なくても十分、スリリングで悲哀に満ちたストーリー。ラストシーンは最後まで予測できず、そして崩れ落ちるような美しい悲劇。こんな書き方もありなんだ! とその場にくずおれてしまいそうになる。
読了日:10月25日 著者:ジョン・ル・カレ
おかしな先祖 (角川文庫)おかしな先祖 (角川文庫)
落語風の作品集。ショートショート、というにはすこし長めのものが多い。落ちの切れ味はそれぞれ健在。かまれるといろいろなものに変身するおにいさんの話や、賭け事に情熱を燃やした末についに死んでしまった4人の男たちの話など。一番似ているなと思った本が、遠野のむかしばなし。寓話の創出を目指した作者のこれが真骨頂かもしれない。
読了日:10月21日 著者:星 新一
夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)
従来訳で読みましたが、いや名作だった! 時間旅行ものの大傑作、との評判に劣らぬすがすがしくも暖かい作品です。主人公ダニイのヒーローっぷりはもちろん、ダニイを陥れる悪人たちも案外魅力的。何より、作者ハインラインが、徹底的に人間の技術の善性を信じているのがすがすがしい。
不景気な今だからこそ読みたい、読んで発奮したい作品です。
読了日:10月20日 著者:ロバート・A. ハインライン
火山の下 (EXLIBRIS CLASSICS) (エクス・リブリス・クラシックス)火山の下 (EXLIBRIS CLASSICS) (エクス・リブリス・クラシックス)
この作品はゲーテの地獄篇を目指された、と、解説にあったが、そのとおり、救い様のない絶望感、破滅へまっしぐら。描写のアイロニーも、ほとんど主人公と同じ境遇だったという作者の心中を思うと、ひゅっと背筋が寒くなる。
作中に散りばめられた象徴的な事物、錬金術神秘主義思想、クリストファー・マーロウのようなエリザベス朝の文学、それに散りばめられたスペイン語が、現代の舞台に妖しい地獄を描き出している。
それに忘れちゃいけない、酒。とりわけ悪魔の酒メスカル。小道具としてこれほど身近なのに、こんなに象徴的なんて。
読了日:10月19日 著者:マルカム・ラウリー
宇宙の声 (角川文庫)宇宙の声 (角川文庫)
地球人も宇宙を自由に行き来する時代、少年少女がひょんなことから宇宙開拓隊員となって活躍する2編。ジュブナイルとはいえ、だからこそ、作家の「文明の美徳を信じる視点」が清清しい。

読了日:10月16日 著者:星 新一
ちぐはぐな部品 (角川文庫)ちぐはぐな部品 (角川文庫)
人生のいろいろな機微を教えてくれるショートショート集。昔は文体にまで注意はいかなかったけど、大森氏の解説通り、カンにしてソ、明快な文章で、まずそこにひえっとなった。時代に併せて書き換えたり、読者とは常に初対面の心得で、など、かっこいい!
読了日:10月11日 著者:星 新一
一生クビにならない脳 (フォレスト2545新書)一生クビにならない脳 (フォレスト2545新書)
脳の観点からみた、まあ自己啓発本。ですが、確かに脳みそをフル活用して生活すると、人生は楽しいと思います。「知ってらい」と言わずに改めて読んで、そうしてちょくちょく実践すると良いと思う。おさかなたべて。また、最後の提言はちょっと面白いなと思いました。
読了日:10月10日 著者:篠原菊紀
きまぐれロボット (角川文庫)きまぐれロボット (角川文庫)
アイディアの刺激として、人生のともとして、座右に置きたい作家、星新一諸行無常だったり、いやいや万古普遍だったり、自業自得だったり。子供の頃に読んだ以上に、また噛み締めるものがありました。……あとがきの谷川俊太郎も書いているように、解説や、ましてや書評なんて野暮の骨頂、と思いつつ。
読了日:10月09日 著者:星 新一
スロー・ラーナー (ちくま文庫)スロー・ラーナー (ちくま文庫)
難解ではあるが心になにがしかを残さずにいられない短編5編。ピンチョン独特のへんてこな名前や、鮮やかな描写や、なにより場の雰囲気のなんとも言えない楽しげな感じがそれぞれに味わえる。「エントロピー」の契約満了パーティーとか、「秘密のインテグレーション」のお屋敷とか、どうしてまあこんなに夢一杯の「場」が出てくるんでしょう。行ってみたい。
読了日:10月08日 著者:トマス ピンチョン
クラウド時代と<クール革命> (角川oneテーマ21)クラウド時代と<クール革命> (角川oneテーマ21)
角川ホールディングス社長が、どのような考えや見解を持って今のITビジネスを見ているのか? という、興味をそそるテーマを、まさにご本人が書いているというところだけでも、この本は一読の価値があると思います。驚くべきは、すでにこの本の情報ですら、「あれが盛り込まれていない」「これについては?」という部分があること。
読了日:10月05日 著者:角川 歴彦
スノーボール (下) ウォーレン・バフェット伝スノーボール (下) ウォーレン・バフェット伝
オマハの賢人、世界有数の資産家、ウォーレン・バフェットの伝記、後半。より膨れ上がり、複雑になった仕事ぶりに、上巻よりずっと難しかったが、911テロやサブプライムローン事件など、まさに同時代の出来事にかの賢人がどう反応し、対応し、対策したかを書籍で読める、というのはありがたいことじゃないだろうか。生き方そのものに尊敬の念を抱きました。まだまだ存命のバフェット、今後どんな活躍をするんだろう。
読了日:10月02日 著者:アリス シュローダー

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