日月星辰ブログ

Vive hodie.

映画感想 僕のエリ 200歳の少女

すぎたことですし、と言っていましたが、程よく消化されてきたので、感想を書きます。

ストックホルムが舞台の、少年時代の甘酸っぱい恋愛の物語です。

ヒロインはすでに何年年を経たかも分からない、永遠に12才の少女。ヴァンパイアなんだと思いますが、作中でそれが明示されることはありません。主人公が一言、「ヴァンパイアなの?」と聞いてはいますし、血を吸われた人間の最期や、その他いろいろな表象が、どうやら彼女はヴァンパイアらしい、と示唆するにとどめています。
降りしきる雪の画像から、冷たく突き刺さる罵倒のモノローグに始まる全編の描写はあくまで控えめで淡白。唯一はげしくやってたのは燃えて死ぬ犠牲者のシーンですが、まあこれも少し引いたアングルから映すだけ。カメラは常に傍観者の視点を意識しているようで、奇妙にいっぽ引いたアングルが多かったな。特に精神的にきついところは引いて撮ってることが多かったです。流血系とか、いじめ系とか。

 何より日常にとけ込んだ異常行動の描き方が実に淡々としていて、帰ってぞっとします。注意深く画面を見ていないと分からないのとかもあったりして、あー、猟奇事件もこんな風に、日常のすみっこで、さりげなく行われるのかもしれないなあ、と妙にリアリティを感じる映像。おそろしい。

 あと秀逸に恐ろしかったのは結末。えーと、あの結末だと、二の舞ですよね。二の舞。エリに魅入られた人間の成れの果てをすでに知っている鑑賞者からしてみると、なんかやりきれない気分になります。ハッピーエンド? それだけは絶対に違う。あれはこれから訪れる長い長い悪夢のほんのさわりの部分にすぎないのだと思います。