日月星辰ブログ

Vive hodie.

これはよい物語ですね。

これ読んだ。

時生 (講談社文庫)

時生 (講談社文庫)

冒頭数十ページさえ読めば「タイムトラベルもの」であることは自明なのでそれをネタバレとしない前提で。これは良い物語でした。

小説、というよりも物語色の方が強い。しかも物語要素てんこ盛り。いろんな「お助けキャラクター」が折に触れて様々な「キー・アイテム」を渡してきた時にはいちいち吹いた。えー、ゲーム?

ものすごく楽しませてくれるし、退屈させない、一気読み必須。いわゆる定番の「型」や「ディテル」を使用しても充分ユニークな作品を書けるという証左だと思う。表紙と帯のせいで一見、オナミダチョウダイオヤコノキズナ的な作品かと思いきや、東野圭吾らしいユーモアも、理知も、お遊びもふんだんに仕掛けられている。のでオナミダチョウダイ苦手な人にもご安心して読んでいただけるかと。
しっかしこの人、なんでこんなに「ムカツク若者」書くの美味いかねー。また「白夜行」にも見られるようなところどころにちりばめられている時代ネタも。これが「白夜行」に至る習作の1つだと言われても信じちゃうよ、私。
物語の定型で盛り込まれていた要素:
ビルドゥングスロマン
●パーティー(RPG的な)行動
●タイムリミット
●キー・ワードとキー・アイテム
●親子(父子)もの
●立身出世もの
●そのたもろもろ。

 ラストのオチは感動必至。泣ける、というのではなく、うひょー、通った! 的な。

 でもって、読んでる間中、ハルヒの「涼宮ハルヒの陰謀」が併読できるな、と思っていた。物語の型はまったく同じ。ただ、絡ませる要素が少し違うだけ。…「陰謀」の方は「友情」がキーでタイムトラベラーが複数のところが(あえて、複数とさせて!)キモ。いっぽう、この作品は「家族」がキー。「家族」キーのみで様々なしかけ要素がふんだんに盛り込まれている。

やっぱり、このひとは、プロだ。