日月星辰ブログ

Vive hodie.

能楽の「よぉー、ぽん!」って続いてこそカッコいいというのは当たり前か

 いまやテレビとかの効果音で使われまくってしまっている能楽の「掛け声+鼓声」、囃子でつづいたればこそ。最初にイイカゲンにカットして効果音で使おうとか言い出した奴出て来い。
 とある方向より援護の手ありて、げにうとき方への道ひらかれしに、あちらへ惑い、こちらへ迷いつつ、一路目黒の能楽堂へ。
 ていうかランドマークの第一目標がいきなり工事中で、3分ほど悩みました。ホント、方向音痴なんで勘弁してください。
 舞台装置は、大きな動物か人間か、の体内に比喩される寺社じみた能楽堂と、松ノ木の絵、それになんか道だけ、たまに大道具が出てきても布と竹かなんかの枠のみ、というシンプルさ、着物の色や髪の毛や面だけで柳の木の精とか、狐の怨霊とか、やってしまう渋さ、北野がらみで能楽の歴史に関してはちょこっと、調べてそのままどっかいっちゃってたのが、いろいろ凄いということで燃焼。
 能でなんかの精、とかいって、今日は柳だったけど、緑の服着たりして、お爺さんだったりして、キャラだよね。とか低俗な感想から、魂よ飛んで行ってしまえついでに数百年ほど、さかのぼってしまえという訳の分からない興奮まで、いろいろ思いましたが、やっぱり一番良かったのは「殺生石」。悪役好きとして。
 最後、玉藻前が退場する時、ちょっとだけ舞台側を振り返って、さっと身を隠す所作をして消えていくのが切ない。女の人や老人などは、ほとんどアクションが無いのだけど、あまりにアクションが無いのでゆるゆると歩んでいるのに気がつかず、ワキに気を取られてぼさっとしていたら、いきなり凄いところにいたりして、まるでワープしたみたいで凄い。手品だあれ。ミスリーディングだ。しかも別に、シテばかり凝視してても充分幽玄です。ワープしなくても幽玄です。
 私は席の取り方が悪かったらしくちょうど右腕に当たる柱が邪魔で邪魔で最初はご不満でしたが、考えようによってはこれで隠れているところは月夜の雲がかかる如し、などといっていろいろごまかして諦めたら、すうと心が軽くなりました。確かに一番良い席は松の木が正面に見えるあのあたりなのでしょうが、もうどこでもいいや。
 囃子がまた、声が凄く、凄く凄くって頭悪そうだがまあ一朝一夕によくなる頭でもないのでほうっておいてとにかく凄く、笛もまた惚れます。役者の声にかぶさって、唯でさえなに言ってるのか分かりにくいのにさらに絡みつきかぶさり、もう訳が分からなくなってもとにかくのめりこんで聞いてしまいます。もういい、分かった。玉藻前、可哀想過ぎ、とかいろいろ。東哲としてはその前の演目の「東岸居士」とかに注目すべきかもしれませんがとにかくも玉藻玉藻。
 東岸居士も、なんとなく蒼天の「寒貧」のエピソードを思わせる話で、まあ寒貧ほど俗世を捨てておりませんが有髪で踊ったり謳ったりで、爽やかな居士、しかも「生まれたのはどこかわかんないから出家じゃない」とか屁理屈をこねるあたり、寒貧というか禰衡ですか。世捨て人もえー。というわけで演目は、「東岸居士」「遊行柳」「殺生石」でした。

 公演中、ずっと気になっていたのですが、後ろのほうからストロベリーな匂いが漂ってきていました。休憩中にそっとふり返っても、おじ様がいらっしゃるばかりで、ストロベリー・スメルと関係の深そうなタイプはござらっしゃりません。ではこれは能楽堂か。能楽堂の匂いか。ストロベリー・スメルなのか! と最後まで謎でした。能楽堂の匂いではないだろうしなあ…。なんだろ。
 お香の匂いが「殺生石」あたりのころにしていましたがこれは能楽堂でもよさそうなので気になりません。ストロベリーの正体やいかに。